2007年4月21日土曜日

一枚の葉書

部屋の片づけをしていたら、一枚の葉書が出てきた。

あしなが育英会で働いていた時に担当していた学生からの葉書だった。
短い文面にも心のこもった言葉が並んでいる素敵な葉書だった。
僕は、正月に『転居先不明』で戻ってきてしまった彼女宛の年賀状を思い出した。
彼女もこの春から新社会人として頑張っているんだろう。

あしなが育英会で働いていた時、僕は九州と沖縄の担当だった。
年に2回の街頭募金とチャリティーウォークイベントの前には学生たちと一緒に、新聞社、テレビ局、協賛企業などに頭を下げて回った。街頭に立ち、声を張り上げた。一緒に汗をかき、一緒に泣いたこともあった。
その彼らも、今では社会人だ。

この前、そんな彼らと久しぶりに話していたら、
「あしながの活動ってなんだったんすかね。学生の時、僕らは本気で必死になって誰かの役に立ちたい、社会を少しでも良くしたいって思って活動してたわけですよ。でも今こうやって何やってるかって言ったら、毎日会社で働いてるだけで...自分はなんかの役に立ってんですかね。あしながで学んだことって役に立ってんすかね。」
と聞かれた。

それは正直言って、僕が毎日思っていることと全く同じことだった。自分は一体誰かの役に立っているのか?
僕は職員だったわけで、彼らから見れば先輩だし、実際職員は学生たちからは「~先生」と呼ばれる。「川上先生」だ。だから彼らから見れば僕は何か賢明な答えを知っているはずなのかもしれない。
かもしれないけれど、正直言って僕も全く同じことを感じながら毎日を生きている。
僕は今29歳で、社会に出てから今年で6年目。彼らは1年目か2年目。たしかに、「先輩」かもしれないし、「先生」だったかもしれない。でも実際は全然たいした事ないし、2年も6年も大差はない。
だから僕は彼に、
「でも実際俺も一緒よ。毎日思うよ、それは。『俺何やってんのかな』って。でもさ、そうやって葛藤して悩み続けることが大事なんだと思うよ。思い通りに生きてる奴の方が少ないわけで、でもその中で理想を忘れずにずっと葛藤し続けることが大事なんじゃないの。だってさ、会社入って毎月給料貰って、でそれに満足してその中でいつの間にか理想とか、学生の頃に持ってた気持ちとかそんなん忘れて『葛藤』もなんもしなくなる奴もいるわけじゃない。だからさ、やっぱあしながの活動を通して学んだことっていうのは、そうやって今『葛藤』していることだけでもすげえ大事なことなんじゃないの。」
と答えた。

もう彼らも学生じゃない。社会に出て、それぞれの場所で頑張っている。葛藤しながら。

今では僕が職員で彼らが学生だった頃のように頻繁に会うこともない。でも改めて思う。僕があしながで出会った彼らは一人一人がみんなとても素敵で、一つ一つの出会いが全て僕の宝物だ。たしかに、距離と時間が離れれば離れるほど思いは風化してしまうものなのかもしれない。けれども、少なくとも僕の側ではそれはないだろう。いつかは分からないし、何年に一回なのかも分からない。でも生きている限りまたいつか会えるだろうし、その時はまた何事もなかったかのように話せればな、と思う。

たまには僕も手紙を書こう。

2007年4月12日木曜日

便り

遠く離れている人から便りをもらうのはとても嬉しい。

先日、スリランカの女の子から手紙が届き、今日は偶然同じ日に、ニジェールとケニアとアメリカからメールが届いた。

スリランカからは、激しい戦闘で電気もない中、学校に通い、一生懸命勉強し、大学入学試験に受かり、今は入学の準備をしているところ、という知らせだった。

ニジェールからは、相変わらずの50度という暑さの中、相変わらず元気な父ちゃん、セイニはニジェール川の渡し舟を切り盛りし、子ども達は相変わらず元気に暮らしているという知らせだった。

ケニアからは、スーダンでの髄膜炎の集団予防接種プロジェクトが無事終了し、懸念されていた髄膜炎の大流行を何とか防ぐことができたという知らせだった。

アメリカからは、フランスの子ども達は今でも”Ob La Di, Ob La Da”を歌っているという知らせだった。彼女はフランスで英語の先生をしていて、僕が以前ニジェールから日本に帰る途中に彼女の学校に寄り、授業の中で子ども達と”Ob La Di, Ob La Da”を歌ったことがある。

そんなことを書いていると、京都から電話があった。この春から晴れて大学院に入学し、今日が一日目の授業だったそうだ。なんだか妙に元気だった。ま、いつも妙な人だから心配は要らない。久しぶりに聞く関西弁、京都弁はいいもんだなと思った。
僕の親しい友人の一人は大阪出身だけど、彼女は大阪弁を話さない。実は話せないんだ、という説もある。たまには大阪弁で話して欲しいな、などと思った。

みんな、それぞれに、それぞれの場所で、一生懸命頑張っている。一生懸命生きている。
一つ一つの便りからなんだか元気をもらって、「俺も頑張んなきゃな」、と思った。

スリランカの女の子からの便りの最後には、こう書いてあった。

My favorite sentence:
   “Try, Try, Try again;
       You can fly oneday”

2007年4月4日水曜日

ありがとうございました。

雨の降りしきる中、時折春雷が鳴っています。
それでも、遠く東の空には光が射していて、なんだか不思議な天気です。

先日4月2日の渋谷スプーマでのライブにお越しくださったみなさん、どうもありがとうございました。

満開の桜の2007年度平日第一日目、そんな新しいスタートを切る日をみなさんと過ごせてとても幸せなことだなと思いました。どうもありがとうございます。

演奏曲目は、

1.firefly
2.まっすぐな君に
3.Jeevitha
4.転がる石に苔はむさない
5.桜のつぼみも開くから
6.僕らの願い
7.タビダチノ唄
8.日はまた昇る

5月の渋谷スプーマでのライブは14日の月曜日です。来ていただけるととても嬉しいです。


ライブの翌日、渋谷で用事があったので神宮を抜けて行きました。
小雨の降る中、神宮の森を歩いているのは僕一人だけで、聞こえるのは森に降る静かな雨の音だけでした。
森を抜け宝物殿のところまで出ると視界が開け、芝生が広がっています。
雨の中、森に囲まれた誰もいない芝生の丘はとても静かでした。

子供の頃、よくここでミミズを掘ったり、白つめ草でわっかを作ったりして遊んでいました。