2007年6月3日日曜日

石田先生

2年前、江東区にある東雲小学校の4年生の授業に呼ばれて、ニジェールについての話をした。
つい最近、その時の石田先生からメールをもらってまた東雲で話をして欲しいというお話を頂いた。
6年生になった彼らに会うのが楽しみだ。

僕が小学生の頃、たまに道徳の時間だけ教えてくれる年配の非常勤の先生がいた。先生は道徳の教科書を読む代わりに、若い頃に行った外国の話をよくしてくれた。僕はその先生の話が大好きで、中でも先生がエジプトに行った時の話は良く覚えている。ジープで砂漠に行った時、暑くて暑くてボンネットの上で目玉焼きが焼けたと話してくれたのを興奮して聞いていた。
今考えると、先生のこんな話が僕に外国への興味を持たせたのだろう。

東雲小学校の石田先生と初めて会ったのは僕がまだあしなが育英会で働いていた頃だ。JICAを通して「出前授業」の話を頂き、1週間前くらいからメールで打ち合わせなどのやり取りをしていた。実際に会って打ち合わせをしたほうがいいのかという話にもなったけど、メールのやり取りでその必要はないだろうということになった。
授業の前日、石田先生から電話があり「やっぱり会って少しお話を聞かせてください。」ということになった。それからすぐに石田先生はわざわざ僕の職場まで足を運んでくれ、2時間ほど次の日の授業のこと、ニジェールと日本のことなどを話しこんだ。
別に僕も全然手を抜くつもりなんかなかったけど、思い立ったように授業の前日に突然訪ねてくれた石田先生の熱意を思うと、僕も「いい授業しなきゃ!」という思いが強くなり、家に帰ってから、たしか夜中の2時くらいまでかけて授業の準備をした。

石田先生は子ども達のために他にも色んなことを考えて授業をしていて、昨年、先生の受け持つクラスの子ども達の研究と活動が評価されて、環境省エコファミリーレポートで環境大臣賞を受賞したそうだ。

そんなことを書いていると、最近見たアメリカの学校教育の現状を伝えるCNNのレポートを思い出した。
アメリカのマイノリティー(黒人、ヒスパニック、ネイティブ・アメリカン)の公立学校卒業率は55パーセントで、残りの約半数近い子ども達はドロップアウトしてしまう。
そして、アメリカの路上生活者の39パーセントは18歳以下の子ども。
CNNのレポートでは、そんな子ども達を気遣い、なんとか彼らの手助けをしようと必死に仕事をする大人たちが紹介されていた。子ども達には、愛情を注いでくれる大人が今まで周りにいなかっただけで、もし一人でも親身になって彼らのことを本気で考えてくれる大人が周りにいれば、彼らの人生は180度変わる。

今読んでいる本、「Zen and the Art of Motorcycle Maintenance」にこんなことが書いてあった。
“Care and Quality are internal and external aspects of the same thing. A person who sees Quality and feels it as he works is a person who cares. A person who cares about what he sees and does is a person who’s bound to have some characteristics of Quality.”
「『気遣うこと』と『価値』は、実は同じもので、その外側に現れるのが『価値』で、内側にはいつも『気遣い』がある。仕事をしながら、その仕事の価値を見つけ、感じられる人は、気遣いのある人であり、自分が見ること、することに気遣いのある人は、価値を生む人である。」

石田先生は、自身の仕事、子ども達のことを本気で気遣っているから、前日にわざわざ僕の職場まで足を運んだり、他にも色々な新しい授業をするのだろう。そして先生の熱意と子ども達の心が化学反応を起こし、先生のクラスは自然に『価値』のあるクラスとなっていったのだろう。そして、その価値が外から認められ、自然と環境大臣賞という賞を受賞したのだろう。

石田先生のような先生を持つ子ども達は幸せだ。

僕も、自分のするどんなことにでも気遣いのある、”A person who cares”になりたいと思う。